このブログは快快 / FAIFAIメンバーが週1ペースでお送りしてます。

2014年12月30日火曜日

僕の12月 ベルリンツアー → ALL APOLOGIES

こーじです。

今回は、助成金の報告書用にベルリンツアー11/30~12/9の日記を書いていたので、そのまま続けて僕の12月をまとめた形です。
本当に長いのでまあ、年末年始のお暇な時間に読んでいただけたら幸いです。思いのままで、あまり読む人へのサービス精神もありません。


11/30(日)

羽田空港に22時集合。
天野、捩子、大道寺、野上親子と集まる。ご近所でお世話になっている青山さん、加藤くんが見送りにきてくれた。
旅行を兼ねて、お手伝いにきてくれる山本さんが、チケットの日付を一日間違え11/29の便だと判明する。
今回は、最小人数でインディペンデントな公演という事もあり、ベビーシッターがいないので山本さんにお願いしようと考えており少し不安になる。


12/1(月)
カタール航空811便に乗り、0:15に羽田発。
唐沢寿明がスーツアクターを演じている映画「インザヒーロー」を観る。
役者ということに真摯に取り組み、人望は熱いが大成しないスーツアクターと、適当にやって売れるイケメンがいて(最終的にちがうんだけど)、自分と重ねて複雑な気持ちになる。
今年僕は、役者で食べて行くことを考え、芸能事務所にお世話になり、映像のお仕事にチャレンジしだしたところで、一度自分が面白いと思う事とかは封印して仕事として(いち駒として)役者をすることに専念していた。夏に映画に二本出演し、しかしその映画に対して自分がどれだけ貢献できたのか、まだ完成していないのでわからないが感触としては舞台のときほど見いだすことはできていない。そういう演技に対しての技術不足も否めない。今年の目標はCMのオーデションを決めて出演することだったが、今回のツアーと10月末に客演した多田淳之介演出「奴婢訓」もあり3ヶ月ほどオーデションが受けれていない。
今回のツアーは低予算だが、やりがいを感じ、役者としてワクワクするが、最少人数の為、僕は舞台監督を兼ねてもギャラは雀の涙ほどで、滞在費で消える。
やりがいとお金との兼ね合い。未来への展望。快快で食べて行く事はできない。やはり自分で作品を作るべきなのだろうか?
などとこれからするツアーにも思いを馳せながら、時差ぼけにならない様に眠る。

ドーハに6:25に着き、トランジットの為8時間空港で過ごす。
空港内にprayer roomがあることがカルチャーショックだった。
現地に先入りしている篠田からのメールを見返し、照明とプロジェクターに関して不安に思う事があったのでメールをして、現地入りしてからの段取りを考える。

 






飛行機が少し遅れ、14:30頃出発し、ベルリンのテーゲル空港19時頃に到着。
気温はマイナス2度で寒い。
バスを乗り継ぎ、滞在先兼会場のグリーンハウスを目指す。

二階建てのバスに乗り、皆二階に行き、僕は一階でスーツケースを見ていた。僕たちのスーツケースが置いてあった場所が車椅子スペースだったらしく、杖をついたおばさんにドイツ語で怒られ、スーツケースを移動した。
バスをおり、徒歩になり、皆は先にどんどん行くが、野上親子は子連れでスーツケース、道路も砂利が多く悪路ということもあり、寒い中遅れていた。何となく気にしながら一番後ろを歩くものの、何も手伝う事はできず、そんな一行を眺めながら、「このツアー大変になりそうだな」と思う。

21時過ぎに地図を頼りに到着。
名前の通り9階建ての緑の大きなビル。篠田の情報によると、100人くらいのアーティストがレジデンスしているでっかい渋ハウスの様なところらしい。
篠田とハンガリーから来たツアーマネージャーのオルガに出迎えられ、滞在先の部屋に案内してもらう。
今回は本当にインディペンデントな企画のため、先入りしていた篠田が人望のみで部屋、スタッフ、マットレスからシーツ、客席の材料、何から何まで自力で全て手配してくれていた。
近くにレストランなどないため、篠田がパスタを作ってくれて皆で夕食とペットボトルのビールで乾杯。
その後、施設の案内をしてもらい、打ち合わせをする。


23時過ぎから、僕、篠田、天野で7階にあるプラトウギャラリーに行き、ここに滞在しているシシリアとダニエルに手伝ってもらい、プロジェクターの設置場所やデュアルヘッドを使ったテスト、会場のサイズを測ったりして、2時頃に終了。
鍵の話で篠田と少しもめて、就寝。
夜中にお漏らしをしてしまう。なんとか自分のズボンまででとどめる事ができて、布団は汚さずに済む。おもらしするなんてなんかおかしいなと感じる。



12/2(火)
8:00起床。
8:30出発。舞台美術を受け取るために捩子さんと2人で3つ先の駅まで電車で向かう。客演の捩子さんを朝から重労働に駆り出すことを少し申し訳なく思う。昨日の篠田との喧嘩を聞いていたらしく、「言い返さず偉かったね。」とフォローされ、みかんをくれた。「やっぱ聞かれちゃってたんだ」と思い、申し訳なくなる。
美術を作ってくれていたベルリン在住の野口くんと駅で会うが、まだ出来ていないということで、野口くんのアトリエまで3人で行き待つ。
コーヒーをもらい2時間程待つ。とりあえず使用できるところまで仕上げてもらい、捩子さんと2人、キャリーで会場まで運ぶ。皆はこの間にスーパーに買い物に行く。

野口くんと美術

捩子さんとエレベーターに閉じ込めらた時


13:00~15:00
会場の掃除、舞台面仕込み
グリーンハウスの住人で何人かが手伝いに来てくれた。篠田いわく、こういった公演というかイベント事で、みんなで力あわせないと!と住人が力を合わせる事は初めてだそうで、ギャラリー的にもグリーンハウス住人達の繋がりが出来る事に期待をしているらしい。
ゴミだらけの絨毯をマシンを使って丁寧に洗ってくれていたり、篠田と共に拾って来た廃材をサンダーできれいにしてペンキを塗って客席を作ったり、壁を白く塗り直してくれたりと頑張ってくれていて、こちらも最高の作品をみせたいと意気込んだ。

15:00~19:00
プロジェクター、照明吊り込み
照明スタッフのリヨンがくる。リヨンは普段、イベントなどで照明をしているらしい。
トラスを組んだりして、けっこう大掛かりなものになった。

自費で、旅行兼手伝いにきてくれる浅尾さん、ゆいさんが到着。
快快的には浅尾さんにご飯を、ゆいさんにシッターをお願いするつもりでいたが、本人達にちゃんとお願いしていなかったため、少し戸惑わせてしまい申し訳なかった。
浅尾さんが夕食にトマトスープ、ポークソテー、パプリカとパスタのサラダを作ってくれ、皆で夕食。篠田アドバイスで、各々お皿とスプーン、フォーク、コップを持参したのが大正解だった。



20:00~22:00
照明チェック。
ギャラリーが打ちっぱなしの1フロアでだだっ広いスペースという感じだったので、夜にならないと明かりがチェックできなかったのだが、照明をつけてみるとイメージと全然違い、焦る。天井の低さを計算していなかったことを後悔。リヨンに相談し明日の朝仕込み直ししてもらうことに。
僕はリヨンに任せていいものか不安になったが、篠田が「疑ってもしょうがないし照明の事がわかるのはリヨンだし、何よりリヨンは照明のことが好きそうだし、楽しそうにやるから信じて任せよう」と言っていて、人と作品を作るってことは人を信じて任せるってことだよなと納得し、篠田が今まで演出家として責任を負ってきた事を感じた。
篠田とどんな風に直してもらうか作戦を立て、この日は終了。



12/3(水)
10:00~13:00
朝起きて、ギャラリーに行き、篠田と2人でリヨンを待つ。
篠田が、今朝日本から電話があり、姉が病気で余命1ヶ月と報告されたと聞く。
僕も、若い頃同じ病気で父を亡くしたということもあり少し話をした。
この状況で、今回のアントン、猫、クリという演目を演出するのは、内容的につらいなあと言っていた。出来るだけ支ようと思う。
リヨンがきて、照明吊り直し。リヨンも色々代案を考えてきてくれていて良かった。作品に対して意思疎通がとれだしてイメージも出来てきて良い照明になりそうだ。



13:00~16:00
リハーサル。
会場に合わせて、立ち位置等の変更、確認をする。
去年アメリカツアーで1ヶ月、今春福岡での公演もあった為、身体では覚えているが、なぜそうしているのかという内容が伴っていないため、空気感がなく、流れにも乗っておらず、もう一度何をやっているのか確認していこうとなる。

17:00~18:30
音響、プロジェクターセッティング。
照明シュート。

ゆいさんが夕食に、シチュー、ジャガイモとパプリカの炒め物を作ってくれ、皆で夕食。

夕食後、制作ミーティング。
インディペンデントな公演ということで、諸々ぬけがちなので綿密にする。

19:00~23:00
明かり作り。
リヨンが色々考えてきてくれたおかげで、かなり良い照明になった。
グリーンハウスの人達も遅くまでいろいろ作業に残ってくれていた。



12/4(木)
早朝に、トイレで目が覚め、洗濯をして、スーパーに買い物に行き、大道寺と昼食を作る。
ジェノベーゼパスタ、トマトスープ、ジャガイモとベーコンとほうれん草のバターソテー。
篠田が元気がないと思い作ったが、あまりのどを通らないらしい。

13:00~15:00
パフォーマーのリハーサル。

リハを終え、小休憩中、篠田の姉が亡くなったと聞く。

15:30~16:30
音響テクリハ

休憩中、グリーンハウスの女の子が篠田に、とキャンドルを持ってきてくれた。

17:00
リヨンがきて、照明を吊り足す。

18:00~19:00
テクリハ

しばらく行方をくらましていた篠田が戻ってきた。

照明と字幕が干渉して、字幕が読みづらいことがわかり、ゲネに向けて、とりあえず全体的に照明を暗くする様にプログラミングし直す。
明日、陽が落ちてからリヨンにもう一度きてもらい、字幕をプロジェクションしながら明かり作りをし直すことに。

浅尾さんの夕食(ローストポーク、きのことブロッコリーのペンネ、トマトスープ)を皆で食べる。ハイクオリティ。
人が喜ぶ料理ってこういうのなんだよなあと自分の作った料理のことを思い少しむなしくなる。

20:00~22:00
ドレスリハーサル

グリーンハウスの住人(アーティスト)が観客として40人程集まる。
簡易のバーを作り、みんな飲んだりタバコすったりしながら観劇。
かなりエンジョイしてくれていた。
自分たちの感触としても、ミスはあったがかなりグルーヴ感があって良かった。
2部のコメンタリー上演は、篠田は参加しないということで、オルガに司会をしてもらってパフォーマー4人とプラトウギャラリーのアントン企画担当者レティで試しにやってみた。残った観客も少なく(2部も本編であるといわずアフタートークというアナウンスをしたということもあると思う)、少しさみしい感じだった。



12/5(金)
霧雨
朝6:30起床。

ジャガイモとベーコンとほうれん草のスープを作り、皆で朝食。
スーパーに自転車でお土産を買いに行く。
昼にゆいさんがフレンチトーストと、フルーツヨーグルトサラダ作ってくれる。

13:00~15:00
パフォーマーリハーサル
昨晩のドレスリハーサルで気になった点を確認する。
特に安野太郎さんに作曲してもらった歌の部分の練習。

15:00~17:00
 休憩

17:00~18:30
明かり直し
照明のプログラミングを一つ一つ直し字幕が見えやすくなった。

20:30~23:00
本番①
有料動員20人程。
8階にバーができ、観客はそこで一杯飲みつつ談笑している。
フライヤー等には20時開演と告知していたが、会場が駅から遠くバスに乗らなければいけないことや、初めての人は迷いやすいというレティの意見もふまえ、20:30頃に開演する事にした。
日本だとあり得ないことだなと思い、演劇に対する捉え方、文化の違いを感じる。
本番はゲネ同様、いいグルーヴ感を持って出来た。観客の集中力もあった。
2部のコメンタリー上演も観客といい関係を持って進められた。
終演後、残ったお客さん達と1時間ほど談笑し会場を閉める。

レティ

バー

 控え室





12/6(土)
パフォーマーオフ日。
捩子と篠田はワークショップ。

僕は一人でうろうろ、観光地行ってみたり、お土産買ったり。
 

 



思い思いに過ごしたあと、18時頃、ヘルマンプラッツェ(駅)へ行く。
皆と待ち合わせし、宣伝として駅前の広場でパフォーマンスをしてフライヤーを配ろうということだったが、全員集まれず。
そこで、5年ぶりに鉄男(ハームティマーマン)に会った。彼は快快がオランダ公演をした際に通訳でついてくれたオランダ人で、オランダから車で会いに来てくれた。とても嬉しかったが、本番の日を勘違いしていたようで、公演は観ずに明日の早朝に帰るということだった。

そのまま皆でHAU2に行き、ダンス作品「AH!OH!」を当日券で見る。8ユーロで安い。捩子さんがフェスティバルトーキョーで一緒に作品を上演したジエのオススメ。ベルリンにある学校を卒業した若手アーティストのプレミアで、満員(250人位)。

 

快快でも公演した劇場で懐かしかった。
劇場に、お客さんが付いているのは素晴らしいと思った。
本当に「アントン、猫、クリ」もたくさんの人に観てもらいたい!うらやましい!と思った。
捩子さんは、前でゲイのカップルがずっとキスしていたことや色々で、そんな感じの劇場の雰囲気がすごくいい!自分もここでやりたいと言っていた。
そこにいたお客さん達にフライヤーを配り、帰りにハンバーガー屋で鉄男と飲んで帰る。





12/7(日)
17:00~18:00
パフォーマーリハーサル
特に歌の部分の微妙な音のずれを確認、修正する。

18:00~18:30
ミーティング バラシの確認をする。

20:30~24:00
本番②
何かずっと流れに乗れず、綱渡りのような感覚でなんとか止まらず、1時間乗り切ったと言う感覚だった。途中火災報知器がなったり。他のパフォーマー3人も同じような感覚だったといっていた。
外から観た感覚としては、お客さんには伝わらないだろうが、今回のドレスリハと本番①のできが良かったから、これが普通の出来だよと篠田が言っていた。
字幕を介して観客は言葉を理解しているのに、この微妙なゆらめき程度の差異でも、こんなに伝わるものというか会場のグルーヴがなくなるんだなと痛感した。
それでも、お客さんはとても興味をもって集中して楽しんでくれていた。


サインがほしいというお客さんもいた。
手伝ってくれていたダニエルは、ここで今まで観たもので一番だ、僕の故郷のロンドンでもやるべきだ!といってくれていた。
2部で、「当初僕はムービースターになりたかったが今はこうしてここにいる。そしてここからまたムービースターへ。」みたいな事をいってたから映画関係の仕事をしているお客さんがブラピからもらったというワッペンをみせてくれた。あやかろうととりあえず触る。「君は舞台上よりも、終演後の今の方がアクターっぽいな。」と言われ、どういう意味か困惑する。



多分ベルリンの観客は、特にジャパニーズクオリティに驚いたんじゃないかと思う。
1週間の滞在だったが、街の雰囲気やお店の感じ、インフラ、人の生活の仕方など、ゆるさを感じた。
日本人の僕たちにとっては、アートはやはり日常ではなく、非日常で特別な事という意識がある。「アントン、猫、クリ」がけっこう職人的な要素の強い作品で色々綿密に作り込んでいることもある。
逆にいうとベルリンでは、アートは生活の一部という感じの一種のゆるさがあり、クオリティにこだわって作り込むということがあまりないらしい。これはベルリンで作品を観たわけではないから偏見かもしれないけれど。


12/8(月)
10:00~13:00
部屋の掃除班、舞台班に分かれて片付け。
僕は舞台を片付けていたが、照明灯体がテープでとめているだけとか、トラスも椅子の上に板を置いて壁に立てかけているだけとか、日本だとあり得ない状態だったけれど(本当に危ないところは直したけれど)、地震がない国ってすごいなと思った。結局一個テープがはがれて灯体が落ちかかっていた。ここでもゆるさを感じた。

来た時よりも美しくという感じで無事片付けも終わり、休んで、グリーンハウスの皆にお別れ。
バスを乗り継ぎ、テーゲル空港へ。
街はクリスマス一色だった。


21:05テーゲル発

12/9(月)22:45羽田着

と、ベルリンツアーに行き、「今年はバイトして、オーディションでCMを1本決めたら目標達成だ」と思い帰ってきたら、部屋の机に悪魔のしるしの危口さんから手紙(「ALL APOLOGIES」という危口さんの企画イベントのフライヤーの裏に)が置いてあって。

そのイベントへのお誘いで、嬉しかった。
というのも、自分で自由業で俳優として食べていくんだと決めたら、本当に今はスケジュールが空いていることがこわくて。それって仕事がないってことで。 

いくら嘆いたところで、働かない事にはお金は入ってこない。
みんながストレス抱えたり、抱えてなかったり、まあ基本社会人は毎日働いている中で、ちょこちょこバイトしてるだけの自分がその人達より生活水準高かったら世の中おかしいって思うし。
まあ実際はそういうことも多々あると思うけど、僕は古い考え方だし世渡りがうまくないので「努力をすれば報われる」というか、「努力しないでうまくいく」とは自分に関して信じることができないと最近思った。
占いを信じたり、ひきよせの法則を信じたり、結局は「信じる」事ができればうまくいくってことなんだけど、やっぱり「信じただけでレクサスがうちに来て乗れるとは信じられない人間なんだ、自分は。」と気付いた。
ほんと毎度当たり前でくだらないこと言ってる。
うだうだ言わずにやる事やれよって。
わかってるし、ほんとにわかってる。ほんとわかってんのか?

あと、帰国一発目は、宮崎晋太郎君が演劇公演のアフタートークに呼んでくれていたので、題材の「オイディプス」「アンティゴネ」を読んで、アフタートークへ。初めてギリシャ悲劇を読んだ。初めて読んだというこの事実!ほんと不勉強だ。自分の仕事に対する不勉強。自分のしていることのルーツがわからないから、毎回舞台に立つ度にゼロからスタートしてしまう、積み上げる事ができず、いつまでも素人感覚ないんじゃないか。
「人間だれでも一度は役者になれる」みたいな言葉をきいたことがあるけど(ウォーホルの「誰でも15分は有名人になれる」ではなく)、っていうのはその人のマンパワーだけで、1度は乗り切れるみたいな解釈をしてたけど。
ぼくは積み上げない代わりに、うまくならない代わりに、毎回ゼロからスタートしてどうやったら出来るのかと模索してきたと思う。
「人間だれでも一度は役者になれる」という立ち方で、今まで舞台にたってきたと思う。
そういう演技(演技と呼べないかも)の仕方をしている人に誰が仕事をお願いするだろうかと考えると、そこに付き合って一緒に作ろうとしてくれる人、あるいはそういう人を作品の中に配置できる人だろう。

良い言い方をすれば「初心を忘れない」「原点回帰」。
悪い言い方をすれば「舞台慣れしてる素人感覚のやつ」。

悪い言い方すると最悪っすね。いま吸ってるタバコの味が、金魚の水槽の味に感じた。


って脱線したけど、
12/14 宮崎君の「ベーコンエッグ感想戦」にアフタートークに行きました。
宮崎くんが、役者をして行く為に、自分で作品を作ってみて演出をしてみるという選択をしたことにすごくいいな、真摯だなと思った。笑いとかに逃げなかった事も。別に笑いは逃げじゃないけど。
ぼくはそこをやる勇気がないままここまで来たから。
役者は基本使われるものだと思うんだけど、人に使われるのか、自分で道を切り開くのか、作品を作るのか、やりがいとか、お金とか、何かもやもやを抱えたまま年を越したくなかったということもあり、危口さんの「ALL APOLOGIES」に参加することにしました。

で、一日戻って
12/13 「ALL APOLOGIES」顔合わせ、打ち合わせ
細かく覚えていないが、印象的だったのは、男が主役で男ノリということ。快快で女の集団の中にいることがほとんどだったから、すごく新鮮だった。
危口さんが「清原の引退会見の長渕と清原の顔をすげ替えたやつに笑った」ということで、危口さんのiphoneが爆笑に包まれながら回ってくるけど、自分に回ってくるまでそれを共有できるか、爆笑できるかドキドキしたっていうのが、その日の感情の起伏のハイライトだった。笑えてほっとした。



あと初めましての人が多かった。まあ実際は初めましてじゃないんだけど、感覚的に初めましてってことです。僕が如何に人に興味がなかったかってことです。

12/15
チェルフィッチュ「スーパープレミアムソフトWバニラリッチ」を観にKAATに行く。
面白かった。
一度快快でも参加したフェスTheatre der Welt との共同製作。そして、ずっと海外で、国内で、活躍し続ける岡田さん。こんな事いうのはどうかとも思うけど正直うらやましかった。岡田さんの本を買おうか迷い、買わずに帰った(これはしゃくで、とかじゃないっす)。
チェルフィッチュと快快を比べるのはナンセンスとも思うし、ただ個人的な気持ちです。
「ALL APOLOGIES」は謝罪会見をモチーフにしてるから、この「羨ましい≒ねたみ」みたいな気持ちもちゃんと罪として見つめて、来年はすっきりした気持ちでスタートしたいなと思った。

12/16
快快の会議。皆がうろ覚えの「スーパープレミアムソフトWバニラリッチ」をスラスラと言える自分に気付き、ちょっと嫌になる。これは嫉妬からきているんだろうか?長いものにまかれたいんだろうか?

~26
バイトしたり、とにかく空いている時間は、近所の喫茶店やデニーズに行き、「ALL APOLOGIES」で何をやるかやみくもに考える。とにかくやみくもだと思う。正直、この効率の悪さ、お金にすると言う意味では本当にこういうこと向いてないなあとつくづく感じる。

罪と罰/世間と個人/謝罪と懺悔
テキストを書きながら、これを表現するにはこれだ、とロープに針金を入れて小道具を作る。
自分の制作した小道具の中でもかなり秀逸。この先がどこにつながっているのかという作品にしようと決める。



12/20
Vシネの撮影。
初めての経験。そこに来た他の役者さんが、20才、22才と若く、同じ現場、同じ立場。10才の年の差を感じ、映像方面の仕事という意味で、「失われた10年」と思った。まあこちらに関して自分がぼーっとしてた10年ってことです。

そこで自分より経験がある女の子に「どんな子が売れた?」と聞いたら、「キャラクターがある子、もしくは見た目の印象と中身が合ってる子」だそう。確かにそうだなと思った。まあ、おれは違うな。でも売れにいくけどね!

スタッフさんが現場の準備のためどこかに行き、女の子と2人で夜中/雨/高架下で待機中、その子と暖をとる為に、そこら中の枯れ木を集めては燃やしていた。最後の方は燃やす物がなくなり自分のノートを燃やしていた。おれは「もう無理っしょ」と言っていたが、その子は「まだまだ。」とそこらへんに生えている枯れ草を抜いて集めてなんとか火を保ってて。ガッツあるな、売れてほしいなと思った。

12/23
危口さん、宮崎君、武本君とうちで、「ALL APOLOGIES」の打ち合わせ。

危口さんに送ってもらった、概要とメモから、自分で考えたテキストを読んでもらい擦り合わせ。打ち合わせの後、危口さんとビールを飲みながらだべった。危口さんとは今まで何度もあっていたけれど、2人でということがなかったので、色々話した。

学があるなあ、本読んでるなあ、自分の考えをちゃんともっているなあとつくづく思う。こういうひとがちゃんと作品を作れるんだなと思う。色々思ったけど、一番覚えているのは「情けは人の為ならず」が好きじゃなく、「罪を憎んで人を憎まず」が好きということ。間違ってたらごめんなさい。
今は見返りを求めるスパンが短すぎるんじゃないか、良い事をしたら、それが自分の子供や孫に帰ってくる位でいいんじゃないか、個人商店の人は多分それがわかってると思うみたいなことを言っていて、つい先日あった事を思い出した。

近所の、おばあさんが店頭にいる昔からあるであろうケーキ屋があって、なんとなくケーキを買いに行った時、僕がチーズケーキとキャラメルケーキを迷いすぎて、「チーズケーキ、、、、あ、やっぱり、キャラメルで、、、、、、、、、すみません。やっぱりチーズで。」と言ったら、「迷うねえ。じゃあ、おまけでショートケーキつけとく。」となって、ええ?となったんだけど。
「裏で旦那さんが作ってるんですか?」と聞いたら、そうじゃなくて家族で作っているとのことで。きっと子供たちの為の、つなげて行く為の、身に染み付いた無意識のサービスなんだろうなと思った。昔ながらのって感じで全く洒落てないけど、自分でケーキが食べたいときはここに買いにいくと思う。

で、自分は、ほんとうに「今すぐに!」ってくらい見返りを求めがち。
ドイツの日報を見てても、ほんとひしひし感じます。
冷静にみると、ほんと何をそんなにやったんだよ。勝手に悲劇のヒロインぶってる。寝てないアピールかよ、ほんと。

自分は、両親が共働きで頑張ってくれたおかげで、金銭的に何不自由なく育ち、父親がなくなった後も私立の大学に(しかも美大に)、行かせてもらい、今もこれからも親のことで金銭的な心配はなく、好きなことをやらせてもらっています。ただこのまま進むと、自分の子供にはそういう事はできません。親から自分がなんの制限も受けずのびのびさせてもらったのに、その余裕を自分が全て食い尽くして、自分の子供に制限をかけてしまってはあまりに身勝手だなと思いました。ほんと自分の事しか考えてないんだなと思いました。罪。

あと選挙の時、自分の無知でほんと迷ってわけわかんなくなって、facebookのみんながシェアしてるのとか見漁ったり、外山恒一の都知事選の時の政見放送を見て選挙に行かない方がいいんじゃないかとかVICEをyoutubeで見てたりしたと言ったら、ルーツというか歴史を知るのもいいと思うとアドバイス頂き、それも良かった。
僕は政治に疎い罪悪感を埋める為に「たけしのTVタックル」を見たり、世界平和の為に何か動くかわりに「VICE」を観たりしてるような人間です。
危口さんは聖人の様だと思った。まあ僕の言葉は軽いんですけど。
あと、サブカル好きの観客はいるけれど、サブカルのアーティストはいない!アーティストは理想に向かえばいいだけ!アーティストが自分からサブカルを自負するの違うぞ!
こういうのなんかすみません。膿み出しです。

12/25
午前中、個人練をするため施設を借り、一人でリハ。隣の部屋から演劇の練習の台詞が聞こえてくる。
「あの子の顔がジャガイモに似ている事と、あなたが万引きをする事に何の関係があるの!?」
「あの子の顔がジャガイモに似ている事と、あなたが母親につらくあたることに何の関係があるの!?」
俺へのあてつけか!って思うくらい聞いてしまい、集中できないまま小声で練習してちょっと動いて帰る。

10年位前、ジャガイモに書いた自画像

夜「ALL APOLOGIES」のリハに行くが、自分がテキストで作ったものをイメージ通りに体現できずにしょんぼりして帰る。出るんだから体現できないと、そこが俳優の仕事です。今回は演技する気ないけど。
あとクリスマスを通じて、これまでの自分の不徳を痛感する。
見返りを求められるような人間ではなかった。
本当にこれまでたくさんの人を傷つけてきたことでしょう。すみません。
こんな自分の状態では観客に対して物申せない。内容の事を考えるよりもまず自分の周りの人に顔向けできる様にならなければ、お客さんに顔向けできない。
自分の実生活で気持ち悪く感じていることをなくさないといけない。


12/26
Vシネ撮影。
事務所の忘年会にちょこっと参加。
板橋駿谷「脂のってるなあ。俺も頑張ろう。」と思う。

12/27
小屋入り。他の人の出し物をみる。
みんなだが、特にcore of bellsの出し物のスマートさ、演技のうまさを見てけっこう落ち込む。
自分が現時点で、力を発揮できるのは舞台だと思っていたのに、センスの差とか年とかを感じて(実際は聞いたら2才しか違わなかったからセンスってかクレバーさかな)、「舞台にも居場所がもうないのか?」と本番前にナーバスになる。
本番ソワレは及第点。

12/28
マチネ 及第点。
ソワレまでにどうしたら満足いくところまでいけるか、車の中で一人考える。
思いついて、ソワレで試して満足。
本番中、オペをしながらの危口さんの「ありがとう」という一言で今回参加して良かったと素直に思えた。

今回、売れた森さんを近くでみていたこともあり、危口さんと打ち上げで、「一点突破」について少し話して、僕はここまでやってきて売れてないから、やみくもに地力をつけたらどうにかなるってことでもないなって思った。
戦略、戦略。




12/29

昨日、ああいうことをしたことで、自分は今年と今までの自分の行いを締められたのだろうかとぼんやり。宮崎くんがメールをくれた事で気分が晴れてブログを書き出し今にいたる。
でも気分だけで進んでちゃ、これからはダメ!

強くもなってきたが、融通もきかなくなってきた。

尊敬するけど売れてない先輩芸人みたくならない様にします。




今年はチャレンジが始められ、実りの多い年でした。

来年も不器用ながら、もっとうだつ上げていきますのでよろしくお願いします。


と、一度まとめかけたのですが、今バイト先の忘年会に行って来て感じた事を最後に。
僕は今まで自分の事しか考えずに、ここまで来ました。
自分の誠実さには自信を持っています。
でも、周りの人への誠実さは、自分の考える誠実さでしかなく、自分に対しての誠実さでしかなく、押しつけの誠実さで、本当に周りの人への配慮も自分の考えている配慮でしかなく、その人の立場にたっての物ではありませんでした。
今、僕の周りにいてくれる人達は、本当に僕に傷つけられながらも、見捨てずに来てくれた仲間です。
本当にありがとう。
正直、自分の人間性は芸能界に向く物ではありません。
ただ、父親が僕に残してくれたこの誠実さは、捨てる事なく、なんとか折り合いをつけて、この仕事で食べられる様に、そして周りの人の力になれる、支えられる人間になりたいです。

今後も迷惑かけたり、傷つけてしまったりすることは多々あるとは思いますが、今後ともよろしくお願い致します。


                                    山崎皓司





0 件のコメント:

コメントを投稿