こないだ、Hebbel am Uferの芸術監督を9年間もやってたマティアスさんが今年辞めるにあたり、『The World is not Fair』っていう、万博みたいな大規模の企画(ってそれほどのもんじゃないけど)が、ベルリンのテンペルホーフ公園にて開催されました。もともと西ベルリンの空港であって、今公園になっているあの巨大な空間に、世界中から色んなアーティストが集まって「パビリオン」を造ったり、そこで公演をやったりするわけですが、チェルフィッチュと僕も『Unable To See』という作品で参加しました。パビリオンはこんな感じです。
福島原発のぼろぼろになった状態を模様したモデルを造ろ、っていうアイデアがまずあってんけど、ベルリンはまじで雨がすごいから屋根も追加。この不思議な建物に、ある監督と助監督が「3Dカメラ」(実はなんもないねんけど)をもって潜入し、迫力ある3Dドキュメンタリーをとるって、言うたら諷刺的な設定で、屋上に登り、防護服を着たままバレーダンスをしたり、シンクロされた動きで、黄色い長靴で冷却水を汲んだりするなど、なんともいえないパフォーマンスをやりました。
僕もドラマトゥルグと翻訳を担当した他、上の写真みたいな(そら雨具やんかってゆわれたら返事に困る)「防護服」を着てうろうろし、セリフを同時通訳することになりました。でも個人的にちょっと盛り上がったことに、なんと、作品のサントラもやらせてもらうことができました。
サントラというのは、公演中にも使う曲がありますけども、パフォーマンスとパフォーマンスの間の一時間に流れている、インスタレーションみたいな曲もある。ギターを弾いて、実験的な音楽やPost-Rockが好きな僕は、一人やとちょっと単調な感じになるから、もう一人の音楽家に電話して誘ってみました。この人ですわ。
ご覧の通り、アルミホイルのロボットです。こんな恰好でライブをやってる人は、僕の地元の友達であって、若干自閉症で口もあんまきかへんねんけど、オトはつくれるやつです。久々に録音することができたからわくわくし、彼にピックアップしてもらって、車をHAU1(HAUの中でもっとも古い劇場)まで走らせた。どんなサウンドをやろうかな、漠然としたイメージしかなかってんけど、運転しながらいろいろ話した結果、実際なんも知らない僕らのファンタジーにおける「壊れた原発」、そのぼろぼろになったあれこれがしそうな音をつくろうってなって、要は様々なノイズを録音することにしました。どんな気違いがやってきたかと、音響の人に驚かれるのを覚悟した上、アンプの音量を限界まで上げてギターを近寄せ、そのフィードバックから生じるノイズをエフェクトでさらにいじって、いろんなテクスチャーをつくる間に、向こうもNO INPUT MIXERでリズムをかぶせたり、低音域でサポートしたりしました。そうです、インプットの無いミキサー、つまりそこにさしてるケーベルがすべてそこに戻ってきちゃう、回路をショートさせるような感じで、びっくりするぐらいのいろんな音色が出てきますねん。例えば間違えてファックス番号にかけてしまった時のあのぴーぴーする音とか、レコードに針を落とす瞬間のガサガサとか、とにかくアナログ感たっぷりのいろんな音で楽しく遊べる。
さらに盛り上がったことに、HAU1の大ホールを貸し切りにし、その舞台の上でレコーディングさせてもらうことができました。HAU様様、ほんま最高~!木造のあの舞台がベースで震度する感じ(弾いてる間に音に共鳴するところを探して、何回も何回も響かせては怖いほど震えるねん)、しかも木が共鳴してるあれをそのまま録ることができたから、同じ木造であるパビリオンも音に反応し震えるわけで、それがお客さんの足まで及び、なんか動いているわ、なんかやばいことが起こりそうな予感で、建物のフインキがますます面白くなりました。
以上はこないだの録音の話やけど、音楽について語るというのは、建築について踊るようなものだと、フランク・ザッパさんが言うてはるらしい。たしかにそうだ。そんなわけで、サントラを来週か再来週soundcloudにあげることにしましたので、皆さんも音をがんがん上げて屋根がぶっ飛ぶまで聴いてください。
せバ